これの続き。
今回西出てなくて、捏造スコット兄さんが出ています。
性格歪んでいるってレベルじゃないので、苦手な方は見ない事をお勧めいたします。
美坂の言い訳「正直深夜のノリだけで書いた」
「よう、愚弟。随分景気の良い面してんじゃねぇか」
視界に映ったのは懐かしい兄の姿。懐かしいと言っても、それに付随してあたたかい情に心が満たされることなんてない。
「……兄さん」
思い起こせば、上司が彼が来るとか言っていたような気がする。それを覚えていたなら、絶対はち合わせるような事態は避けたのに。
身長は、兄の方が少し高い。割りとがっちりした体つきをしていて、それ故、鋭い瞳に見下ろされると誰もがすくみあがる。
「フン。たかだかスペインに勝ったからって、偉そうな顔してんじゃねえよ」
自身より少し低い声で、上から押し付けるように言葉を吐く。息苦しさに喘ぐ事も出来ず、ただ見上げる。眩しい。
「何だ? もんくでもあんのか」
「……そんな、ことは……」
「ハッ! テメェは昔からそうだ。言いたいことも言わず怯えてみせて。気に喰わねぇ」
知っている。昔からずっと知っている。自分の存在は彼を苛立たせ、そんな兄を相手にアーサーは何もすることができず、ただじっと堪える。兄の何がダメだということではない。ただ、ひたすらに恐ろしい。刷りこみのようなものかもしれない。どうしても、堂々と振る舞うことが出来ない。
本当は、他国がそうであるようにもっと穏和な関係を築きたかった。独りは嫌だ。恐ろしい。海の向こうの憎い隣人が、他国の話をする度どれほど羨んだことか分からない。
アーサーは人を愛していた。国民の全てを愛していた。ししてまた、それと同じくらい兄のことも愛している。これもまた、刷りこみに近い。けれど、報われたいと思うこともある。そんな、些細な願いさえ口にすることも憚られる。だって、兄はそんな戯言一蹴するに決まっている。
「本当、お前なんていなくなればいいのにな」
何度目かの言葉。数えるのも疲れた。何度だって兄はそう言う。そして、同じ言葉を吐かれているのに、どうしてもこの心はその痛みに慣れることができず、ただ抉られる。
『大丈夫。他の誰がお前を認めんでも、俺がおる。ずっと、お前と一緒におって、お前を愛したる』
見上げた瞳と同じ色。憎らしい男の言葉を思い出して唇を噛み、アーサーは俯いた。
どうして、あの男の言葉など思い出したのか。気持ち悪い、だけだ。だけど、だけど、知っている。本当は既に答えは出ている。
あの男はアーサーの認めたくない心裏を見抜いた。悔しいのか腹立たしいのか分からない。けれど、けれど、分かっている。本当はもう、分かっている。
すがりつきたいのだ、自分は。初めて伸ばされた、あの手に。あの人と同じ色の瞳に。
気付けば廊下にはもう、アーサー1人の姿しかなかった。
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