手折る事は容易いのに、指に刺さった毒で命を落とす、ような。
手折れば一緒に死んでしまう。でも、一緒には生きられない。酷いジレンマ。一緒にいたいと願う心は、すぐにドロドロとした黒に塗りつぶされて、視界は真っ暗。何も見えない。聞こえない。ただ、この身を焼き突き上げる感情に身を委ねて、堕ちる。落ちる。
手折ることは容易いのに、指に刺さった毒で命を落とす。剣を突き刺したのに、この身は硬質なものに穿たれていて、ゲホッと音を立てて口からは赤くドロッとしたものが溢れ出して、むべもなく。けれど哀しいかな、死なない。まだ、死なない。
白い頬を汚す赤を拭えば、痛々しい傷口が姿を現すと言うのに、自分も相手も死ぬことはない。意思は関係ない。己が死にたいとどれだけ願っても、この身は死を知らない。この身を求める人がいる限り、何度この華の毒に触れても死ねない。何度も死なず死ねずの争いを繰り返して、今もまだ隣に並び立つことが不思議でもある。
可憐という言葉が全然似合わない。性格も歪み切ったその華が、未だに夜中にうなされて飛び起きることを知っている。背中に嫌な汗をびっしょりとかいて、悪夢に苛まれて目覚めると、いつも震えて、いて。
その身体を抱きしめてあやす。薄い華奢な身体は簡単に手折れてしまいそうだと、いつも思う。こうやっていつか来る死を待つより、いっそ、この手で手折って、指に刺さった毒で命を落とすことが出来ないだろうかと、時折夢想する。
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