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「 救われたのは誰(ニル刹) 」

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救われたのは誰(ニル刹)

2012.01.03 Tuesday 01:13

年賀状出さなくていいかと思っていたら正解で、元旦は個人からは年賀状が来なかった寂しい美坂です。
とりあえず買いたかった福袋は全てゲットしたので良しとする。
そして翌日勉強すっかーと思っていたら家族麻雀で一日が終わった。
昔小学校の先生が「三学期は行く逃げる去るだ」と言っていたことを思い出す二日間でした。

続きはシリアスな感じのSSです。
刹那がニールの部屋で女物のピアスを拾うっていう場面から書き始めて手の赴くままにやったら、予想と百八十度くらい違う話になりました。
 

 

 恐ろしいことに、全ては偶然の産物だった。
 様々な偶然が重なった結果、ロックオンの家で一晩を過ごすことになった刹那は、リビングに置いてあった革のソファを本日の寝床と定め、いつもの日課であるトレーニングをしていた。その最中、ふと、ソファの下に何かが落ちているのに気付いた。別にそのまま放っておいてもよかったのだが、それがミッションに用いる重要なものであっては、ソレスタルビーイングの活動に支障が出る恐れがあると考慮し、刹那は腹を床につけて手を伸ばし、ソファの下に落ちていたそれを拾い上げた。

「あ゛」

 『あ』の音に濁点を付けたような形容しがたい声をあげたのはつい先程までシャワールームに入っていたこの家の主だった。ほんわりと湯気が漂う長身を見上げると、これまた筆舌に尽くしがたい表情がそこにはあった。

「あー…それは、その、だな」

 彼にしては随分と歯切れが悪い。その原因は恐らく、刹那が手に持つソレ。こういうものに疎い刹那は、それが女物であろうことしか分からないが、ロックオンにしてみれば『見つけられると嫌』な物であるらしい。
 女物のピアスがこの部屋のソファの下に落ちていることに対して、刹那が抱いた感想は、『この男は自分のテリトリーに他人を入れるのか』ということだ。今回の刹那の滞在に関しては、任務ならば仕方がないと考えるだろうと推測していたが、そもそもこの男は他人を部屋に入れること自体に抵抗がないのかもしれない。その事実が示すところはつまり、彼は刹那と考え方を異にする人間であるということだけ。
 だから、刹那は無言でそのピアスをロックオンへと差し出し、彼が受け取るのを確認すると再びトレーニングへと戻った。

「聞かない、のか?」

 恐る恐るといった問いかけを不思議に思ったのはむしろ刹那の方だ。だから無視した。何故そんなことを聞かれるのか分からないから、答えようがない。

「………そうか」

 肩を竦めて長い息を吐いた男は果たして何故そうするのか。安堵とも落胆とも取れる行動に、刹那はトレーニングを切り上げてロックオンを見る。

「聞かれたいのか?」
「いや、そうじゃない」

 ならば話したいのか。それこそ意味が分からない。女物のピアスを見つけられて気まずそうにするくせに、わざわざそれがそこにあった理由を話したいなんて。不思議に思ったから率直にそう言った。するとロックオンはあからさまに参ったという顔をして、おもむろにピアスをゴミ箱へと投げた。綺麗な放物線を描いてピアスはぽかりと空いた口へと吸い込まれていく。

「一応言っておくとだな、ソレスタルビーイングが活動を始めてからはこの部屋には誰もいれてない」
「……何故そんなことを俺に言う」

 聞いてもいないし聞きたいわけでもない。
 他人を部屋に入れようが入れまいが好きにすればいいと刹那は思う。それは他人が干渉すべきでないロックオン自身の領域だ。そこからソレスタルビーイングに関する何かが漏れるなどというミスは、この男ならしないだろうという一種の信頼はある。だからこそ、好きにすればいい。
 ロックオンは少し黙って、眉間に皺を寄せていた。それから少し呻くように低い声を出し、だって、と口を開く。

「お前さ、今軽蔑しただろ?俺のこと」
「していない」
「なら無意識なんだろ。けど確かに、ああいうことをしているのに女と遊んでいるのかってくらいの感情は持っていただろ」

 そうは言われてもさっぱり分からないと刹那は首を振った。確かに少し、ほんの少しだけ何かがひっかかった。その何かがこの男の言う『軽蔑』だったのかどうかは定かではないが、それこそ刹那の問題であってロックオンは関係がない。

「俺に軽蔑されたからと言ってどうこうなるわけでもないだろう」
「普段から背中預けてる相手に軽蔑されてみろ、哀しいにも程がある」

 刹那には理解できない苦い笑みを浮かべ、それにな、とロックオンは付け加えた。

「この手は人を殺す手だ。愛する手じゃない」

 開かれた右手は風呂上がりの所為かいつものグローブはつけられていなかった。節くれだった男らしい手だった。何とはなしに、刹那はその手に触れていた。他人に触れられることを拒むようにぴくりと指先が震え、けれど逃げなかった。刹那は思う。綺麗な手だと。それなのにどうしてこの手は人の命を奪うことしかできないのだろうかと。それは、きっと、同じだ。自分と。
 最初からそうなのか、それ以外の何をも忘れてしまったからなのかは知らない。だけどこの手は、きっと、刹那と同じように、人を殺すことしかできない。戦うことしか得られない。

「俺は……」

 口を開いて、言葉を発して初めて、刹那は自分が何を言いたいのか分からないことに気付いた。そもそも、口を開いたこと自体がイレギュラーだった。何かを言おうとして薄く口を開けたまま、ロックオンと目があった。すると碧の瞳はすっと細められる。ロックオンは軽く首を振ると、触れた刹那の手を軽く握った。本当に軽く優しく。少しでも力を入れればするりと抜け落ちてしまいそうなほど、そっと。

「お前は俺の救いだ、刹那」

 どうして笑うのか分からない。分からないけれど刹那は、ロックオンのその何かを諦めたような顔に軽い嫌悪感を覚えた。
 以前、ぽつりと彼が呟いていた言葉を思い出す。それは何かのニュースを見ていた時のことだった。その時、ロックオンは辛そうな顔をして無意識に呟いていたのだ。

『俺はまだ、前に進めない』

 その言葉に現わされた彼の何かが、彼にこんな顔をさせているのだろうか。遠い、と刹那はそう感じた。近くにいるのに、触れ合っているのに、ロックオンは遠い、と。
 だからこそ余計に分からないのだ。彼はいったい何を思って刹那を救いだと言うのか。分からないから困る。どうしていいか分からなくなる。こんなことならあんなもの、拾わなければよかった。そうすれば少なくとも今、得体の知れない感情を抱えて戸惑うことはなかったのに。
 なかなかどうして、繋いだ手が放せない。







―――――――――――

ロックオンが言う『救い』は、人を殺すことしかできない自分だけど、刹那に何かしてやることが出来て自分は少しだけど人を殺す以外の何かがあると感じられたというもの。
ニル刹と言っていいのか分からない程アレな話ですが、まぁ表記するなら、ニル→(←)刹という感じですね。
いつもと違うテイストというのを最近心がけてはいるのですが、ニールが刹那に抱いている感情は大体いつも同じで、刹那は自覚しているかいないかの違いしかないよなーと思います。それは結局自分がハッピーエンド嗜好だからだろうなーと。

 

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