いよいよ折り返しの3回目は、
リヒテン×香です。
ノーマルを出してくれるのはいいとして、なぜに女の子攻めですか、あみだの意地悪め。
リヒも香君も口調がいまいちなうえに性格把握を間違っているので、多分におかしいです。
青春ほのぼのライフな気がしなくもないけれど、相変わらず爺と仙人がおかしなことになってます。ちなみに学ヘタ。
それでもいい方はどうぞ。
「あ、あの……これ着てくださいまし」
何がどうしてこういう状況になったのか、香にはサッパリ分からなかった。
学校からの帰り道、珍しく生徒会長や王耀に引き止められることなく、また湾やヨンスも伴っておらず、一人気ままにあるいていた。すると電柱の影から、同じ学校の制服をまとった少女が現れたのだ、手に大きな紙袋をさげて。
最初はしかとしようと思ったが、それが顔見知りであればそうもいかず、仕方なく「うぃーす」と声をかけたところ、がしりと服の袖を掴まれてしまった。しかも顔を真っ赤に染めて。そして俯いていた少女が意を決して顔を上げての第一声が、冒頭のそれである。
香は呆然と、少し下にあるつむじを見下ろす。彼女はリヒテン。兄馬鹿で知られるバッシュの妹で、隠れファンも多い美少女。そんな彼女が手に持ち差し出した袋には、いったい何が入っているのだろう。チラリと上から覗くモノトーンカラーに、香はさらに首を傾げた。
「何で俺?」
「あ…あの……その…こ、困るのです。着ていただかないと…」
「マジっすか」
常日頃から女性には優しくするのが紳士だと、昔、耳タコになるほど海賊紳士に言われた香は、それは大変だと思った。女性を困らせてはいけない。あまつさえ、今ここで断ったらリヒテンは泣いてしまいそうなのである。いくら憎き眉毛の教えであろうと、身に染みているものを払拭出来るわけもなく、香はひとつ頷いた。
「別にいいけど」
「本当ですか…!」
心底嬉しそうに微笑むリヒテンから袋を受け取ろうと手を伸ばすと、何故かその手をしっかりと掴まれてしまった。
「行きましょう」
「え。何処にっスか!?」
「漫研です」
断言されてそのまま、香の身体はズルズルと引きずられ、今し方通った道を逆行。とてもとても嫌な予感がした。頭の中で二人の義兄の笑い声が響く。
「実は、王さんと本田さんに頼まれたんです。凄い勢いだったので断れなくて…」
予感的中。
――あのじじい共…。
香は心の中で罵った。しかし、紳士の心得が身に染みた香にリヒテンの手を振り払えることもなく、見事漫研まで連行されてしまった。
「待ってましたよ、香君! ささ、早く着替えてください。私たちの原稿のために…!」
「そうある。後がつかえてるあるから早くするがよろし」
勝手なことを並び立てるじじい共を睨み付けて、漫研の部室に何故か設置されている更衣室へと入った。扉を閉めると菊がリヒテンを労う声が聞こえてきた。そして、香は袋の中身を取り出した。
「…あの二人、マジでパねぇし」
思わず呟いたのも無理はないと、人は言うだろう。現れたのはゴシック調のメイド服、しかもミニである。あまつさえ、ヘッドドレスも完備。
いったいこの服を着た自分が、彼らにどう利用されるのか、考えるだけでも恐ろしい。しかし今逃げればさらに悲惨な目に会うことは、火を見るより明らかである。
仕方なく香は手早く服を着替えた。するとタイミングよくドアがノックされる。それに呼応するようにドアを開くと、ドアをノックした形で固まるリヒテンの姿があった。
いつものほほんとしているリヒテンの瞳が大きく見開かれる。
「…す……」
「す?」
「凄くお似合いです!」
「あ、あざーす」
うっかり礼を述べてしまった――無理やり着さされたと言うのに。
「あの…ぜひ今度、私が作った服も着てくださいまし」
「え…あ……」
「ぜひ!」
普段の彼女らしからぬ興奮した姿にたじろぎながらも、結局首を縦に振ってしまった。
「い、いっスよ…?」
「ありがとうございます。楽しみにしていますね」
正しく、花がほころぶような笑みを浮かべるリヒテンに、顔に血が上るのが分かる。そっと気付かれないように彼女から視線をそらし、なんでこんなことになったのかと、本日何度目かの疑問を抱いた。不思議と、嫌な気分はしなかったのだけど。
―――――――――――
冒頭でも述べたとおり、二人の性格がおかしすぎる。
そしてこれはリヒ香なのか、本当に。
香君は眉毛と仙人の教えがあるから、礼儀正しく女の子には優しいと勝手に思い込んでます。
ギャル男チックな言葉遣いだとしても…!
ラストを飾るのは怒りがショパンの人。
PR