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「 胃痛と睡魔に襲われる夜 」

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2025.01.21 Tuesday 19:06

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胃痛と睡魔に襲われる夜

2010.09.06 Monday 23:01

幻想虹石の通販がとらのあなさんで始まっています。
しかし何度書いてもBL小説みたいなタイトルだ(実際BL小説ですが)
多分皆様ご存じだとは思いますが、委託の関係上イベント価格より値上がりしております、ご了承ください。
ところで、今日チラッとうちの頁を拝見しに行ったところ、何とサンプルが上がっておりまして、何か予想より頁数が多くてビックリしました。恥ずかしい///←
さりげなくアレなシーンも混じってて、サイトにある分とはまた違うので、ご興味のある方はどうぞご覧くださいませ(宣伝

最近かかりっきりだったことが漸く終わりましたー。
これで後は教習所に専念出来るぜ(嬉しくない
でも結果は明後日なんだよな!
そう言えば、明後日は台風が来るっておじいちゃんが言ってた。マジでか。

続きは唐突に思い付いた良く分からないドーヴァーですよー。


人には耳がふたつあって、左右から同じ音を聞いている。
人には口がひとつあって、ひとつの声でひとつの言葉を話している。
それなのに、森で生きて来た少年はふたつの耳で違う音を聞いて、ひとつの口からふたつの言葉が聞こえた。右耳に聞こえるのは、目の前の口がもたらす音。左耳に聞こえるのは、相手の皮膚を突き破った奥から聞こえてくる音。ひとりの人間から聞こえてくる音はふたつあって、少年は最初混乱した。どっちの音を聞けばいいのか分からなかった。こんなことができるなんて、人間は何て器用なんだろうと思った。けれど同時に違和感を感じた。顔で笑って腹の中で悪態を吐くあいつらは、皆まるで腹の中の声は聞こえないと思っているかのようだったから。
ある時、そんな疑問を抱き続けた少年は、ふとした拍子にその事を言ってしまった。どうしておもしろくもないのに笑っているのかと。どうしてそんなに苛立っているくせに笑えるのかと。最初相手は驚いた。そしてぎこちない笑みを作ろうとして、失敗した。結局最後に気持ち悪いと蔑んで、激昂して去って行った。それきり少年がふたつの声のことを誰かに言うことは無かった。おかしいのは自分なのだと分かってしまったからだ。
少年は青年になった。それでもふたつの耳はふたつの声を聞いている。昔はよく音に惑わされて頭が割れそうな程痛んだことが何度もあったけれど、最近は少し違う。簡単に言うと慣れてしまった。結局それは大都会の喧騒と大して変わらなくなってしまった。むしろ、人と相対する時は相手の腹の内が読めて得をするくらいだ。もっとも、腹の読めない相手もいる(あいつらは絶対魔法を使っているに違いない)。
その日アーサーは欧州会議に出席していた。会議へ珍しく順調に進み、休憩時間に差しかかるといち早く会議場を抜け出した。人気のない廊下の床にずるずると崩れるように座り込み、膝を抱えて両耳を塞いだ。
気持ち悪い。この感覚は久々だ。様々な思惑が交錯するこういう場は本当に気分が悪い。黙っていても多くの声が聞こえてくる。普段なら聞き流せばいいが、会議となればそうもいかず、あまつさえ声は混じって聞こえてくるから結局参加国の思惑もしっかりとは聞きとれない。
酷いのは中と外の差が激しい奴。そういう奴に限ってドロドロとしたものがよく聞こえる。音はダイレクトにアーサーの思考を蝕み、弊害として吐き気へと変わる。
こつん、という靴音に顔を上げると照明が陰った。見下ろすのは慣れた髭面。今一番会いたくなくて、多分一番会いたい相手。

「どうしたの? アーサー。また、いつものあれ?」

答えず再び立てた膝へと頭を埋める。上を向くだけでも結構気力と体力を消耗するものだ。

「部屋、用意してもらおうか?」
「……いいから、かまうな。鬱陶しい。テメェが俺に親切にするなんて虫唾が走る」
「なっ! 人が折角親切で言ってやってんのに、何だよそれ!」

ぎゃあぎゃあと五月蠅い。声が頭に響く。ああ、本当に五月蠅い。たったひとつしか聞こえていないのに。
この体質のことがフランシスに知られたのは、とても遠い昔のことだ。多分、最初の百年戦争の前ぐらい。それまでこの男も例に漏れずふたつの音が聞こえてきたのに、それから徐々に聞こえなくなっていった。隠されたわけではない、ちゃんと中の声もある。ただそれが、たいてい重なっているからひとつに聞こえるだけで。
いつからか、フランシスはアーサーの前で本音しか言わなかった。それこそ取り繕ってあれやこれや言うことも、冗談を言うこともあるけれど、それは些細なことで、本当の言葉しか口にしなくなった。だからフランシスは落ち着く。音がひとつしか聞こえない。まるで普通の人間のように。
唐突に、フランシスはしゃがみ込むとアーサーの両手を掴み耳から引きはがした。

「今は塞いでいなくても大丈夫、でしょ?」

悔しいがその通りで、アーサーは歯噛みする。
昔誰かに言われた。お前たちは本音で付き合うから、相手の嫌な部分も穢い部分も全部見えてしまうのだと。今更、この男と建前で話せと言われても無理な相談だ。何しろこの何百年もの間、二人はお互いに言いたいことを言い合う仲だった。しかしまぁそれが、決してプラスの意味合いであるとは限らないが。
昔妖精は言った。貴方のそれは一生治らない。治したければずっと耳を塞いでいるしかない。だがそれも無理な話だ。だから結局音に慣れるしか方法は無かった。

「聞こえなければよかった」

ぽつりとつぶやいた。重い息を吐きだしたアーサーに何を思ったのか、フランシスは少し困ったような顔をして、掴んでいた手首を解放するとその両腕をアーサーの背へと回した。ぽんぽんと軽く背中を叩かれて、まるで子ども扱いされているようで気に食わなかったが、腕を叩き落としたり、股間を蹴りつけたり、髭をむしりとったりする気力は残っていなかったから、仕方なく身を委ねていた。フランシスといるのは安心するから好きだ、そんな血迷った事を思うほどに身体は疲労していたから。






―――――――――――
元ヤンと保護者みたいな仏英が好きです。
思い付きだから本当にやおいだなぁ。

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